碧色の旗を掲げ

節操無しのレビューブログ。映画、小説、マンガ、ドラマ、イベント、とにかくマイペースに誉めたり誉めなかったりいろいろ書きたい。

よしながふみ 「大奥」 19巻(完結)

男女逆転時代劇「大奥」、16年の連載を経て、無事完結! 200年にわたり

江戸城の奥で繰り広げられた誰にも知られない苦闘の物語の結びを見届けるため、

もちろん公式ビジュアルファンブック付き特装版を購入しましたとも!  胸を

駆け巡る思いを全て文章に直すことは無理なのでざっくりといきます。

 

大奥 19巻(完結)

著者: よしながふみ  発行: 白泉社 ヤングアニマルミックス

白泉社 月刊「MELODY」連載終了

 

 

 

blueflag01.hateblo.jp

 

 

ざっくりとしたあらすじと感想

 

歴史上の出来事→ほぼ史実どおり

 

弱い女将軍なぞ立て続けた腐った幕府とその象徴の将軍慶喜絶対滅ぼすマン・西郷

隆盛と倒幕軍が迫る江戸では焼き討ちを恐れる者、逃げだす者、戦おうとする者、

あるいは武力衝突を避けるために努力する者…の代表格である勝海舟に協力し、

江戸城大奥の主人・天璋院と皇女和宮慶喜の助命と江戸攻撃中止に奔走します。

将軍慶喜のためじゃない。愛した者が愛したものを守るため、将軍の夫・天璋院

将軍の妻・和宮が最後の、そして最大のいくさに臨みます…!

 

 

※※※

 

あぁ、終わってしまったんだなぁ…最終話掲載のMELODY本誌も買ってたんですよ。

サイン入り複製原画、当たりますように…!

 

ジェンダー問題が強く取りざたされるようになった昨今、実写映画化もされ注目

されたこの作品には、フィクションとは言え数え切れないほどの「考えること」を

頂戴しました。理想はもちろん男女平等の世。しかし、男も女も、有能な者たちを

どんどん政に登用して国を栄えさせたら欧米に立ち向かえる、あるいは超えられる

かもと信じた人たちは皆倒れ、この国は結局男の論理の支配する世の中を選んで

しまいました。女たちと、女たちを支えた者らの想いは無意味だったのか?

無価値だったのか?

 

女に政治はできない、女が国の頂点にいたことは恥ずかしい…などとのたまう西郷

どんをぶん殴りたい気持ちはひとまず抑えましょう。女性の政治能力の有無はひと

まず置いておいても、女性の肉体が妊娠・出産を前提として構築されている以上、

国家運営の最高トップが負う激務に耐えることは至難の業、であることは否定でき

ません。家茂さまだって一年も月のものがきていないっておっしゃってたし。

 

 

「大奥」の世界では江戸が焼かれ将軍が殺されるギリギリの瀬戸際において倒幕軍

との交渉役が今まで国政に責任を負ってきたはずの老中やら名門の人たちでなく、

安月給(なんとかしてやれんかったのか板倉様…)の新参者、勝海舟だけという状況に

見せているから一層幕府の異常さが際だっています。旧来のシステムはとっくに

行き詰まっている、変革が必要だという倒幕派の主張は理解できます。

 

しかし、人にはそれぞれの想いがある。長い時を超えて見続けていた読者の立場と

してもはいそうですね幕府はもういりませんね、と全否定できそうにない。容赦

なく全て押し流される運命だとしても、ただでは負けない。そんな敗者の意地を

大奥の者たちは見せてくれました。

 

一方で最後の将軍・慶喜は大奥の者たちにとって完全に他人でしたね。下手したら

他人以上に遠い存在のままでした。  最近始まった大河ドラマ「青天を衝け」の

慶喜とはまた違った色合い…彼の人と柄を掴むのはとても難しいようです。あ、

渋沢栄一氏にあたる人物も何気に大奥に登場済みでした。よく仕えたな…。

 

大奥の終わりに、始まりと長い歴史を意識するシーンが繰り返し挿入されます。

最後まで有功の影がちらついていましたね。家光編の、業病が蔓延する中もがき

苦しみながら必死で活路を求める人々の様子には引き込まれたけれど、有功はそれ

ほど好きじゃ無かったな…。あの人が繰り返し繰り返し気の毒な人と言われ続ける

ほど屈折していたように見えないほどに関心が無い。お万の方の再来と言われ、

大奥の終焉を見届けた胤篤にもあまり心惹かれませんでした。私にとっての

「大奥」は特定の登場人物への思い入れより全体的に多くの人々が織りなす物語と

して好きなパターンだったのかも。

 

大奥の人々のその後について、天璋院篤姫を写した写真が残っている点について

など多少のフォローは入りましたが、やはり書ききれてなかったと思います。赤面

疱瘡は本当に無くなったのか、予防接種で防ぐようになったのに忘れられて大丈夫

なのか、親子さまと有栖川宮はあれきりなのか、誰が亀之助を養育したのか、女が

国を動かしていた事実を都合良くきれいさっぱりなかったことにできるのか…神原

家は明治の世まで生き残ったのか、和宮の亡骸と一緒に埋葬されていた写真の主は

誰だったのかとか、いろいろ気になる…。叶うなら、もっと余韻に浸りたかった。

でもスパッと終わらせた潔さも評価したいです。生き残った者たちは大奥を出て、

青天の下へ旅立ちました。みんな新しい時代に順応してるようで何よりです。

 

 

始まった物語はやがて終わりを迎え、また新しい物語が始まる。長い闇夜が明け、

海の外へ、大きく扉を開いたこの国の行方はいかに…

 

 

 

…いつまで経っても終わらない物語がこの世には山ほどある? なんのことやら?

 

青天を衝け 前編 NHK大河ドラマ・ガイド