碧色の旗を掲げ

節操無しのレビューブログ。映画、小説、マンガ、ドラマ、イベント、とにかくマイペースに誉めたり誉めなかったりいろいろ書きたい。

河合隼雄「猫だましい」

残念ながら、放送大学は来期も単位認定試験の自宅受験が決定したようです。

新型コロナウイルスと日本の戦いはまだまだ続きそう…。ところで、放送大学

心理臨床を学ぶと決して無視できないこころの専門家・河合隼雄先生のネコ本、

本当に買いました。カバー裏の作品概要文には「河合隼雄先生は、実は大のネコ

好きです」とあるのにご本人の後書きでは自分は猫好きではない、と言い切って

おられます。これをどう受け止めるべきか? 人の言葉をいちいち真に受けて

いては見えるはずのものも見えなくなるのか…そんな思索的な一冊です。

 

猫だましい (新潮文庫)

猫だましい (新潮文庫)

 

 

猫だましい

著:河合隼雄   発行:新潮社 新潮文庫

 

 

 

 

 ↓河合隼雄先生の他の著作の感想記事はこちら

blueflag01.hateblo.jp

 

ざっくりとした感想

 

古くから人間の傍にいた生き物、ネコ。完全にコントロールできない、どこか

不可解で、時に疎まれ時に愛されてきた生き物、ネコにはいくつもの顔がある。

この一冊、「猫だましい」は、物語の中に登場するネコを見る…つまり作り手らが

ネコをどういうものととらえているか、何をさせようとするかの投影を見る、

さらにはネコを通して人間の「たましい」を見るための本です。海外のもの、

日本のもの、神話から。昔話から。児童文学から。絵本から。ネコたちを知ること

によって、人の心も知るかもしれません。

 

ちょっと怖い表紙イラスト。猫だまし+たましい … … …とは読み始めるまで

気付きませんでした。河合先生にとって「たましい」は大切なテーマのようです。

「こころの処方箋」より一つ一つの話題をより掘り下げているせいか、若干理解の

難易度が上がっているように感じました。

 

題材になった作品をいくつか取り上げると、まずは猫の目線で語られる文学。と

聞くとまっさきに「吾輩は猫である」が浮かびますが今回は「牡猫ムル」。

ゲド戦記」の原作者ル=グウィンの「空飛び猫」。宮沢賢治作品群に登場する

ネコたち。日本の昔話に登場する「化け猫」たち。有名な「長靴を履いた猫」は、

ネコに長靴を履かせることは大事だが、手袋をはめてはいけないだろう、とネコの

自由を求める人間への忠告となっています。可愛いだけじゃなくて恐ろしげな、

不気味な姿もネコのネコたる一面として語られます。

 

そして、マンガの中のネコとして取り上げられた作品は「綿の国星」。

 

世の中の男は2種類に分けられる…

   『綿の国星』の良さがわかる者と… わからない者………!

 

…と「1日外出録ハンチョウ」の大槻氏が言ってた (第40話より)「綿の国星」?

これが女子大槻の伏線だったらすごいな…はともかく私は少女マンガにてんで疎い

ので内容どころか作品名すら知らなくて、ネコが主人公とは、こんなところで目に

するとは驚きとしか言いようがありません。巻末には作者の大島弓子さんご本人

描き下ろしの感想マンガが掲載されています。

 

他、もろもろ気になる作品群を越え、「牝猫」のお話で締め。河合先生の分析、

読み取りはどこまで著者が意図したものなのか…分からないけれど、興味深く読み

進めながら、なぜこんなに面白そうな作品群を私はまだ読んでいないのだと無念の

気持ちを抱きもしました。「100万回生きたねこ」すら存在は知りながら一度も

読んだことがないのですから。私の人生はどれほど多くの価値ある出会いを取り

こぼしてしまったのか…と劣等感が強いしお察しくださいな人生を送っているわけ

ですが、例え価値あるものだけを追いかけたって人生の全てを費やしても足りない

はずなのに。他人の作った価値あるものを吸収した上で自分が何を成すかが大切

なのに…。

 

と、ここにきて「ハンチョウと放送大学の親和性」についても考察の余地がある

のでは…? などと結びつきようのない結びつきを真面目に考えてしましました。

綿の国星」は直接的で無いですが放送大学で心理臨床の科目を取らなければ

この本を手に取ることも無かったし、博物館系の科目では科博、しかもホモ・フロ

レシエンシスがドンピシャで出てくるんですからね。単純に自分のアンテナが

増えて、今までは受け流していた情報をより多く感知できるようになったのかも

しれません。無関係と思われるものに結びつきを見出す作業だっていつか何かを

生み出すかもしれない。

 

高尚な精神も世間から賞賛される功績も持ち合わせていなくても、私には私なりの

視点があればそれでいいのでしょう、多分。

 

 

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