碧色の旗を掲げ

節操無しのレビューブログ。映画、小説、マンガ、ドラマ、イベント、とにかくマイペースに誉めたり誉めなかったりいろいろ書きたい。

河合隼雄「こころの処方箋」

放送大学で心理臨床の科目を学んでいるとたびたびその名を目にする河合隼雄氏。

箱庭療法を日本で初めて導入するなど日本の心理学分野に多大な貢献をした方だ

そうです。私は臨床心理士になる気はないのだけれど(どちらかと言えば自分が

救われたくて心理学に手を出した人間)、いいかげん著作のひとつも読んだ方がいい

だろうかと思い立ち、おためしがてら調達しました。

 

悩める現代人に宛てた、何気なくも心を打つ普遍のメッセージ集です。

 

こころの処方箋(新潮文庫)

こころの処方箋(新潮文庫)

 

 

こころの処方箋

著:河合隼雄   発行:新潮社 新潮文庫

 

 

ざっくりとした感想

 

ふたつよいことさてないものよ。

 

文化庁長官にまでなった心理臨床の第一人者の著作とはどれほど学術的か、専門

用語のオンパレードか、と身構えたり第1章から「人の心などわかるはずがない」

などと題されて絶望したりする必要はありません。一般人に向けてとてもわかり

やすく書かれていて、内容がすんなり頭に入ってきました。この本の初版は平成

10年。河合先生は2007年に亡くなられていますが、あまり古くささを感じ

ません。昔から日本のどこかで誰かが抱える悩みに助言をくれて(先生によれば現代

日本人が得る機会を得にくくなった「常識」の再確認にすぎないらしい)います。

そうして読者の共感を得続けたからこそ令和の世まで増刷が続いているのですね。

とはいえ、もし現在までご存命であったら現代の問題についてのご意見もお聞き

したかった。残念です。

 

最も感銘を受けたのが「言いはじめたのなら話合いを続けよう」…日本の女性(特に

妻)が「黙って耐える」状態から一歩踏み出して自分の考えや意見を自己主張できる

ようになったのはひとまず良いこと。しかしその一歩を踏み出したなら意見を表明

するだけでとどまらずに、さらに先に進んで「相手の言い分も聞き、更に自分の

考えを述べ、話合いを続けることによって妥協点を探し出すべきだ」

…さらに辛く苦しい作業になるけれども。と。夫婦関係だけじゃ無く会社など社会

での人間関係にも当てはまると思います。たしかに今までガマンしていたのをとう

とう口に出して、でもそれで問題が解決したことってほとんどない。この章は全部

ここに書き出したいくらい私の心を直撃いたしました。

 

他、

・100%正しい忠告はまず役に立たない

灯台に近づきすぎると難破する

・やりたいことは、まずやってみる

・心のなかの勝負は51対49のことが多い

・説教の効果はその長さと反比例する

・ものごとは努力によって解決しない

・善は微に入り細にわたって行われなければならない

…などの章も、題にも内容にも深く納得させられた印象強いお話です。

前半に偏ってますけれど。

 

ただ、55章もの幅広い構成となっている分、1章あたり4ページ、つまり毎章の

テーマの掘り下げが浅くなるため「この件をもっと詳しく知りたいのに!」という

悔しさを感じもしました。

 

この本は枯れた心にひとときうるおいを与えてくれるけれど、本当に深刻な心の

問題を抱えている方は、この本に限らずただ本を読むだけで自己解決することは

非常に困難と思われますので専門家からしかるべき治療を受けられることをお勧め

します。どんなに良い本だとしても、人それぞれ、苦しみの形は異なりますから

己と完全に一致して正しい方向に引っ張ってくれる都合の良い一冊を見つけるなど

至難の業でしょう。それを言ったら「人の心がいかにわからないかということを、

確信をもって知っている」自分に合った専門家に出会える人も多くはないのです

けどね…。分かっていながら、やはり人は誰かの言葉にすがりたくなるんです。

 

 

 ↓次はこれを読んでみようかしら。河合先生はたましいを大切にしている。

そして猫も大切です。読まなきゃ…。

猫だましい (新潮文庫)

猫だましい (新潮文庫)