碧色の旗を掲げ

節操無しのレビューブログ。映画、小説、マンガ、ドラマ、イベント、とにかくマイペースに誉めたり誉めなかったりいろいろ書きたい。

ヤマザキマリ とり・みき「プリニウス」 10巻

もう閉じこもっていたくない…旅に出たい…心のまま、気まぐれに、足の赴くまま

うろつきたい…でもまだ踏ん切りが付かないあなたにお薦めの、プリニウス元総督

(代理)と行く古代ローマ世界紀行、第10巻です。舞台はシリア、パルミュラ、

そして乱れた帝都・ローマ…。

 

 

 

プリニウス Ⅹ巻

著者: ヤマザキマリ  とり・みき

発行: 新潮社  バンチコミックス45プレミアム

「新潮」連載中

 

 

 

 ↓前巻の感想はこちら

blueflag01.hateblo.jp

 

 

ざっくりとしたあらすじと感想

 

ギリシア行幸し様々な競技会に参加しては優勝を総ナメ、上機嫌でローマに帰る

はずだった皇帝ネロでしたが、臣下からはとっくに愛想を尽かされていました。

ガリア総督のウィンデクスを皮切りに次々と反乱の火の手が上がります。余波を

受けたローマ市内は小麦の供給がストップし、飢餓に苦しむ市民の怒りは皇帝に

向かいます。ネロは唯一頼りにしていた民衆からの支持を完全に失ったのです。

誰からも見放され、反乱軍の迫る中、エジプトへの逃亡を図るネロでしたが…?

 

一方、博物学プリニウス一行は神の宿る森を越えてシリアへ入りました。砂漠の

果てにある都市は彼らに何を見せるのでしょうか…?

 

※※※

 

皇帝ネロが亡くなりました。どこまでも皇帝になるべきじゃなかった男として。

そのくせ時々妙に心を打つ言葉を発する姿勢をも最後まで保ちましたね。

 

 「人間の親は生きる苦しみからの解決策として子供を産む

 …しかし私は母の苦しみの解決にはならなかったし

 母も私の苦しみの解決にはならなかった」

 

ネロを転落させた奸臣・ティゲリヌスの黒幕としてネロの友人であるオト父子が

浮上してまいりましたがティゲリヌスが(この特別パッとしない)二人のために誠心

誠意尽くす人間にはとても見えないので自分なりの目的があったのでしょう。伏線

無く思わせぶりに登場しておいて以後音沙汰無いネロの周辺人物らも相変わらず

ですね…と思えば皇后スポルス・サビナはこれでもフォローされた方なのかも。

 

権力闘争より探究心を選んだ主人公・プリニウスは砂漠の交易都市・パルミュラに

到着しました。人間は生きている間にどこまで遠くに行けるのでしょう? 理屈上

ユーラシア大陸~アフリカ大陸は徒歩で踏破が可能なのだけれど、車も飛行機も

無い時代に大陸に散らばった人々が何ヶ月も何年も費やし、命の危険にさらされ

ながらようやく辿り着き、集い、商売をする町、パルミュラ(後に女王ゼノビア

ローマ帝国と対決するパルミラ)。もう時間に対する概念そのものが現代人と違うん

でしょうね。混沌と寛容さに満ちた文明の交差点が活き活きと、うさんくさく描か

れています。

 

アレクサンドロス大王の東征に従いインド(ガンダーラ)に辿り着いたギリシア人の

末裔まで登場したもんだからプリニウスがインドまで行くとか言い出したらどう

しようかと心配したものの、巻末恒例の著者対談によれば行かないらしい、あぁ

良かった…! いいかげん帰郷なさいなアンタたち。フェリクスには家族がいるし

エウクレスとプリシラ(プラウティナ)を会わせてやりたい…でも会わない方が

いいの? 男女の細やかな心の機微は私の守備範囲外だからなんとも…。

 

 

 

次巻から新章が始まるとのこと。内乱はカットかな?

 

 

↓フワワ。