碧色の旗を掲げ

節操無しのレビューブログ。映画、小説、マンガ、ドラマ、イベント、とにかくマイペースに誉めたり誉めなかったりいろいろ書きたい。

藤崎竜「銀河英雄伝説」 9巻

銀河の歴史を揺るがしたシスコン英雄伝説フジリュー版コミカライズ、第9巻の感想

です。結局TSUT●YA(少なくとも近所のTSUTAY●)はレンタルコミックの新作

2泊3日をやめたようです。管理が面倒だったんでしょうね。

 

危惧されていた新アニメ版銀英伝はなかなか好調な滑り出しらしいですね。なんだ

かんだで十分な制作期間が設けられてましたもんね。良かったね…。うん、良かった

ね…。今我々は完全にリメイク失敗が確定したあるアニメを(心痛により以下省略

 

銀河英雄伝説 9巻

 原作: 田中芳樹(創元SF文庫)  作画: 藤崎竜

発行: 集英社  ヤングジャンプミックス

週刊ヤングジャンプ」連載中

 

 

↓前巻の感想はこちら 

blueflag01.hateblo.jp

 

独り言:銀河英雄伝説の年表をまとめてくださってるサイト様に感謝します。

 

ざっくりとしたあらすじと感想

 

下級貴族出身のくせに容姿端麗・頭脳明晰・冷静沈着(案外そうでもない)・高慢ちきと

全く可愛げの無い”金髪の孺子(こぞう)”ことラインハルト・フォン・ローエングラム元帥

20歳は皇帝陛下からイゼルローン要塞喪失の責任を取って辞表を出した軍の3長官の

後釜に座ってもいいと言われたのに丁重に辞退。案外無欲なヤツだったかもしれない!!

 

…なんて脳天気に考える貴族ばかりではなく、彼の危険性を皇帝に耳打ちした側近も

いましたが、老いた皇帝はあれが自分を倒すつもりならそれでも別にいいよなんて言い

のけてしまいます。特別に良い統治も重大な失政もないまま何十年間惰性で皇帝位に

就いていた老人がそれで良くても、今既存の社会で生きている人全てが皇帝と同意な

はずがないわけでして…それでも同盟軍が大艦隊をもって攻めてくると聞けばやはり

ローエングラム元帥と彼の元に集った若い才能たちに頼るしか無いのでした。

 

宇宙歴796年8月。イゼルローン回廊を越えて初めて帝国領内に侵攻した自由惑星

同盟軍。動員人数、約三〇〇〇万人。

 

三〇〇〇万の人間

三〇〇〇万の人生

三〇〇〇万の運命

三〇〇〇万の可能性

三〇〇〇万の喜怒哀楽 … … …

 

ところで、この物語ははるか未来の世界を舞台にしているとはいえ、人類は精神も

肉体も現代から特別劇的な進化を遂げてはおりません。せいぜい100年の寿命に、

手足を失って瞬時に再生できるようなクローン技術も、難病の万能薬も無い。宇宙

空間に放り出されれば死にます。のどは乾くし排泄もします。一粒で一日分の栄養を

補えるような便利な食料もありません。人としての営みは大して変わらないのです。

 

すなわち…三〇〇〇万人が長期間遠征を続けるには、相応の物資が必要。

 

何が起こったか。イゼルローン回廊の向こうに帝国軍の姿は無く、近辺の惑星には

無抵抗の飢えた民衆だけが残されていました。支配者たちはめぼしい食料や物資を

ねこそぎ持ち出し逃亡済み…。遠い昔、銀河帝国の圧政から逃れた人々によって建国

された自由惑星同盟は「帝国の支配に苦しむ人々を解放する」という大義名分を

持っていました(帝国は彼らを独立国家と認めておらず”反乱軍”扱い)。だから民衆の

窮乏を放っておけず、自分たちの食料を分け与えることになります。これが惑星1つ

ならまだいい(惑星と聞くと地球単位の人口が住んでいると思いがちですがせいぜい

数百万人だそうです)。しかし侵攻を続けて解放した惑星が10、20と増えていった

ら…? ただでさえ三〇〇〇万の口をまかなわなければならないのに。

 

いわゆる「焦土作戦」です。

 

同盟軍はあっというまに物資が欠乏し飢餓に苦しむ羽目に…。イゼルローン作戦本部

にいる総司令・ロボス元帥は急激に衰えてまともな解決策を出せず、この作戦を提唱

した…諸悪の根源たるフォーク准将も(前線にすら出ていない!)「現地調達」という

最悪のキーワードを口にするくらい話にならず、さすがに頭にきたビュコック中将に

一番言われたくないことを言われヒステリーでひっくり返る始末…。

 

何もかもが最悪でした。同盟本国もとっくに財政上支えきれるラインを超えていまし

たが、責任を問われることを恐れた最高評議会はせめて何かの軍事的結果を得るまで

は!と撤退を渋ります。どうにか編成した救援の補給船団はキルヒアイス艦隊に急襲

され、壊滅。同時に各宙域に分散していた同盟艦隊も帝国軍の攻撃を受けました。

勇将ウランフら有能な人材が、無為に宇宙に散っていきます…。ロボス元帥の副官・

グリーンヒル大将は惨状に心を痛め、同盟の現体制に対し深刻な危機感を抱くの

でした。自分はこんな有様を放置しておいて、本当に良いのか…?

 

”ミラクル・ヤン”とて本当の奇跡は起こせません。彼とて自分の艦隊を守れるか

どうかという瀬戸際に立たされていました。そして、戦略上の歯車の1つに過ぎま

せんでした。キルヒアイス艦隊と交戦中、ロボス元帥からの作戦指令が届きます。

残存戦力を全てアムリッツァ星系に集結、帝国軍との決戦に挑む…と。

 

※※※

 

三〇〇〇万にこだわりすぎ、感傷的すぎると言われようと決して軽い数と思えない

三〇〇〇万。しかも現役世代の三〇〇〇万…。

 

キルヒアイスの副官のベルゲングリューン大佐って人、前巻で少しだけ登場した折

「なんか目がイってね?」と思ったのですが、考えすぎじゃなかったみたいでやはり

変な人ですね…。目がイってると言えば部下まで暑苦しいビッテンフェルト中将も…

そう、彼はいつのまにか中将になってましたよ。帝国・同盟双方、前巻から中将が

わらわら登場しています。凄まじい階級インフレが起こってる!

 

魅力的な登場人物が多い作品ですし(ウランフ中将の戦死が惜しすぎる…!) ライン

ハルトの部下たちも功績を挙げるチャンスだ!と相当意気込んでいますが、彼らの

栄光の影で膨大な人数が死んでいるわけなので…。私自身軍略や政治に詳しく無い

から持て余しぎみってこと以外に、そのあたりが完全りハマりきれない原因なのかも

しれません。もちろん面白いからわざわざ感想を書く気になるんですが…。どうせ

あたしゃ「乾杯<プロ―ジット>のたびにグラス割ってたら勿体ないだろ!破片危ない

し!掃除大変だし!」…と思っちゃうくらいロマンを解しないヤツですよ。敵が意志

疎通の無理な異星人だのモンスターだのな方がまだ多少気が楽よね…。

 

階級が上がったことによって明確に変化したのがラインハルトの戦い方です。ヤンは

焦土作戦に対し「(自分はやれないが)ローエングラム伯ならやるだろう」と考えまし

たが、微妙に正しくないかもしれません。ラインハルト独りならおそらくやらない

可能性が高かったんじゃないでしょうか。艦隊同士の会戦で華々しく勝つ方が好き

そう。しかし参謀・オーベルシュタインの存在が選ばせることになった…と、少なく

とも副官のキルヒアイスは思いました。味方の犠牲少なく効果的に大艦隊を弱らせ、

撃退する手段。しかし、罪も無い民衆を巻き込む非情の策です。本当にこれで

良かったのか、と。彼の問いは同時に読者の問いでもあるかもしれません…。

 

彼らはどこへ行こうとしているのか。

 

あぁ、今回も書ききれない! 「フェザーン」にも触れられない…!