碧色の旗を掲げ

節操無しのレビューブログ。映画、小説、マンガ、ドラマ、イベント、とにかくマイペースに誉めたり誉めなかったりいろいろ書きたい。

中野京子「名画の謎 対決編」

年末の慌ただしさに追われている上に相変わらず殺伐とした作品の感想ばかり

書いているのでここらで芸術を愛でてひととき心を安らげられたらと思います。

 

…といってもやはり「怖い絵」シリーズの中野京子氏の著作、至高の”美”の裏側で

やっぱり殺伐とした世界が蠢いていましたが。

 

名画の謎 対決篇 (文春文庫)

名画の謎 対決篇 (文春文庫)

 

 

名画の謎 対決編

著者 : 中野京子   発行 : 文春文庫

 

 

 ↓名画の謎シリーズの過去記事

blueflag01.hateblo.jp

 

お約束のギリシア神話、中世キリスト教、王侯貴族、ルネサンスから、画家夫婦の

肖像、映画の中に登場する象徴的な絵画、20世紀アメリカの大都市まで…毎回の

テーマ毎に対比する2枚の絵画を取り上げて謎解き、それぞれを描いた画家の短い

紹介、の構成で全20篇。今回、「テーマ」は同じ題材、という意味に限定されて

おらず、また「対決篇」と言いつつ絵の優劣自体は問いません。例えばコンサート

ホールで観客がじっと耳を傾けるヴァイオリンの演奏者と中世の貧しい庶民が飲み

踊る陽気な祭において流れの音楽家が奏でるバグパイプであり、真面目な仕事に

つかず画家になりたいと夢想する息子に悩まされる2人の父親の肖像画であり、

地域によって全く内容の変わるイエスの食卓であり、時代を経てそっくりの構図で

描かれている二枚が片方は賛美され、もう片方は非難の的となった理由であり…

 

空いた時間にちょこちょこ読むのにもってこいですね。つい最近、今まであまり

関心の無かった印象派以降の絵画について学ぶ機会を持ったこともあってより強く

引き込まれました。特に「ウルビーノのヴィーナス」は画像だけじゃなく東京で

実物を見たことがありますし。知ってる絵画が出てきただけで少し嬉しくなりま

せんか?

 

まず印象に残ったのは第10章「麗しの王妃」、同一の画家によるオーストリア

フランス2人の皇后の肖像画とその数奇な人生の物語。表紙を飾る2人ですね。

絶世の美女エリザベート皇后とその夫についての見解が以前の著書と少し異なって

いる気もいたしますが、エリザベートとナポレオン3世妃ウージェニー、美を競う

ライバルであっただろう彼女たちの全く違った、しかしどちらも幸福を享受する

時間は短かったであろう生き方は読み手に強烈な印象を残します。美女は強い。

 

もう1つは、19章「のんだくれ」、ロシアの作曲家ムソルグスキー肖像画

描いたのは中野氏の著作でよく見かけるロシアの巨匠イリヤ・レーピン…ロシア人

男性の業病と言っていいウォッカの飲み過ぎにより身体を壊し、とうとう入院した

ムソルグスキーを見舞い、描いた作品だという…売却し、経済的にも困窮していた

作曲家本人の埋葬費用に充てるために描かれた肖像画。もはや身だしなみを整える

こともままならず、アルコール中毒特有の症状を帯びた面相の中で目だけは未だ

生の光を放っている。切なすぎる友情です…。

 

解説に、2017年に開催された「怖い絵」展に深く関わった兵庫県立美術館

学芸員さんによる開催までの裏話。ただ足を運んで展示されている作品や解説を

眺めるだけだった自分にはとても興味深く、楽しく読むことができました。

 

 

↓調べてみると本当に多くの著作を出されているからできるだけたくさん読まなきゃ

なーと思いつつとりあえず同名シリーズから前回紹介しなかった一冊。

名画の謎 旧約・新約聖書篇 (文春文庫)
 

 

 

 ↓それと、最新刊だそうです…なんかいろいろまざってんな

怖いへんないきものの絵

怖いへんないきものの絵