碧色の旗を掲げ

節操無しのレビューブログ。映画、小説、マンガ、ドラマ、イベント、とにかくマイペースに誉めたり誉めなかったりいろいろ書きたい。

藤崎竜「銀河英雄伝説」 10巻

銀河の歴史を揺るがしたシスコン英雄伝説フジリュー版コミカライズ、第10巻の

感想です。

 

このブログと連動したtwitterアカウントを作成しました。TV(主にBS)で視聴した

番組、映画等の感想ツイートなどを中心にちょっとずつぼやいていこうと思います。

今週末にBSプレミアムで「映像の世紀プレミアム」の新作が放送することですし、

楽しみです(独裁者特集なのに楽しみと言うのもアレですが)。どうぞよろしくお願い

します。鷹野樹 (@blueflag01) | Twitter

 

銀河英雄伝説 10巻

 原作: 田中芳樹(創元SF文庫)  作画: 藤崎竜

発行: 集英社  ヤングジャンプミックス

週刊ヤングジャンプ」連載中

 

 

 

blueflag01.hateblo.jp

 

ざっくりとしたあらすじと感想

 

下級貴族出身のくせに容姿端麗・頭脳明晰・冷静沈着(案外そうでもない)・高慢ちきと

全く可愛げの無い”金髪の孺子(こぞう)”ことラインハルト・フォン・ローエングラム元帥

20歳は、アムリッツァ星域において反乱軍どもを…いや、アイツどころじゃない!

皇帝陛下が急逝した! 次の皇帝はリヒテンラーデ候が推すわずか5歳のエルウィン・

ヨーゼフ二世陛下…! いや、でも、あの皇帝、ちょっと…さ。皇帝候補ならブラウン

シュバイク家にもリッテンハイム家にもいるし、このままじゃ済まないかも!?

 

 

銀河帝国領に侵攻した自由惑星同盟軍の大艦隊は持久戦に持ち込まれ息も絶え絶え

ながらも残存戦力をアムリッツァ星域に集結させて帝国艦隊と対決しますが、ライン

ハルト旗下の優秀な指揮官たちの活躍に押され続け、壊滅の危機に瀕しました。

しかしヤン・ウェンリー中将が帝国艦隊を引きつけることで、どうにか生き残った

者たちは同盟に帰還することができました。ヤンの艦隊も遠征軍で最も高い生存率を

誇りながら逃げ切ります。しかし、何の得るものも無く、2000万人が戦死・行方

不明という散々な結末を迎えたこの遠征によって、同盟が失ったものはあまりにも、

あまりにも大きく…。

 

またしてもヤンのために完全な勝利を逃したラインハルトは失態を犯したビッテン

フェルトに八つ当たり同然の厳しい叱責を与えますが、キルヒアイスの諫めによって

どうにか気を鎮めます。しかし、ラインハルトを銀河の新たな統治者にしたい参謀長

オーベルシュタインは、キルヒアイスの特別な立場を適切で無いと考えていました。

 

(後から入ってきたくせに僭越もいいところだと思ってしまいますが)

 

大勝利を収めて帰還したラインハルトを待っていたのは、帝国中に掲げられた弔旗。

彼の遠征中、皇帝フリードリヒ四世は心臓発作のために急逝していたのです。

皇帝を倒して最愛の姉を取り戻すために親友キルヒアイスとともに戦ってきたライン

ハルト。なのに道半ばで敵は勝手に倒れてしまいました…。

 

やる気のない皇帝に代わり長年帝政を取り仕切ってきたリヒテンラーデ候が速やかに

先帝より前に亡くなっていた皇太子の息子、わずか5歳のエルウィン・ヨーゼフを

戴冠させます。しかし幼帝はただ座ってうなずく傀儡にすら不適格な、手のつけられ

ない癇癪持ちでした。”母の実家”的な政治的後ろ盾も無く、さらにやっかいなことに

帝国最大の大貴族ブラウンシュバイク公、リッテンハイム候にはそれぞれ先帝の娘と

結婚して生まれた娘がおり、当然我が子を皇帝にしたいと目論みます。

 

彼らの実に貴族らしい野心はフェザーン商人に煽られ、帝国内にて幼帝廃位の空気が

濃くなるにつれて孤立したリヒテンラーデ公(ちゃっかり自分を公爵にした)はライン

ハルトと手を組むことにしました。彼には戦う相手がまだいたのです…ヤン・ウェン

リーと、腐った貴族社会が。かくして若干21歳、下級貴族出身の”金髪の孺子”は

晴れて宇宙艦隊司令長官、ローエングラム侯爵となったのでした。キルヒアイス

上級大将です。

 

ーいやいやいや、そんな超絶階級インフレが認められるか!! と激怒した貴族たちは

共通の敵を前に総力を結集。打倒リヒテンラーデ公、打倒ローエングラム候、幼帝は

廃位せよ! 主神オーディンよ、我等を導き給え!!

 

…かくして「リップシュタット戦役」は幕を開けたのでした。

 

※※※

 

7巻の感想記事に戦死者数の参照として第一次世界大戦の総犠牲者数を選んだことに

深い意味は無かったのですが(約1600万人)、とうとう超えてきましたね…。

3000万人中、2000万人が犠牲に…目眩がします。政治家さんたち、辞職で

済むならまだいいじゃないの。亡骸すら永遠に故郷に帰れない人々に比べたら。

諸悪の根源たるフォーク准将も入院→予備役編入ということ。失ったものを補える

責任を取ることはありませんでした。(同じ英雄かぶれでも自ら戦線に出て自分の

行動の結果を享受したホーランド中将の方がはるかにマシですね)

 

周囲の自滅により、残ったトリューニヒトがますます権力掌握の道を突き進むことに

なります。アムリッツァで味方を守った功績で大将に昇進し、イゼルローン要塞

任されたヤンがいくら嘆いても仕方がありません。同盟の人々が自ら撒いた種でも

あるのですから。

 

一方、帝国の新皇帝エルウィン・ヨーゼフ二世…フジリュー氏の極端さは外見でなく

中身に凝縮されておりました。生まれつきなのか、躾の問題なのか、5歳でも周囲と

意思疎通ができるかどうか怪しい感じです。時々外見も中身に引っ張られますし…。

原作やアニメでもあんな感じなのでしょうか?

 

 

もう高齢なんだし先帝逝去とともに隠居でもすれば良かったものを、ミュッケン

ベルガー元帥のように潔く身を引くにはリヒテンラーデ候にとって権力はあまりに

魅力的過ぎました。

 

一応”皇帝から姉を取り戻す”目的は果たせたのだし軍人を辞めて姉とキルヒアイス

3人で楽しく暮らす生活に戻るには、ラインハルトにとって宇宙はあまりに広すぎ、

戦う相手を欲し過ぎました。

 

ラインハルトの戦い方の変化を迷い無く受け入れるには、そして己自身の幸福を

欲するには、キルヒアイスはあまりに純粋すぎました。

 

彼らの少年のような純粋さを理解するには、オーベルシュタインは己の冷徹な思想に

沿う統治者を求めすぎました。

 

誰が何と言おうと何がなんでも速やかに退役してのんびり好きなことをして生きる

には、ヤンの祖国と周囲の人々への想いは強すぎました。

 

ブラウンシュバイク公は。リッテンハイム候は。トリューニヒトは…。

 

そして全ての人の「過ぎたる心」を食い尽くしのし上がろうと、フェザーン自治領

アドリアンルビンスキーは闇に蠢くのでした。その過ぎたる野望の行き着く先は、

はたして…。

 

 

フジリュー先生は「封神演義」外伝短期集中連載の為、次巻発売までちょっと長く

待たされそうです。