碧色の旗を掲げ

節操無しのレビューブログ。映画、小説、マンガ、ドラマ、イベント、とにかくマイペースに誉めたり誉めなかったりいろいろ書きたい。

よしながふみ「大奥」 14巻 後編

前回の続きです。どうせ来年初冬まで次巻が出ないんだからネタバレも含みます。

昨日、ネット回線の不調で半分まで書きかけた記事がふっ飛んでがっくりしました…

今回は長いです。

 

大奥 14 (ヤングアニマルコミックス)

大奥 14 (ヤングアニマルコミックス)

  

大奥  14巻

著者: よしながふみ  発行: 白泉社 ヤングアニマルコミックス

白泉社 月刊「MELODY」連載中

 

 

”没日録”を読みこの国の現状を理解した八代将軍吉宗は様々な改革に乗り出しますが、

その才も時間も限界がありました。多くのやり残したことを抱えながら晩年を迎えた

吉宗はある女性に悲願を託します。長女にして九代将軍家重の小姓だった頃から目を

かけていた田沼意次。家重の信任を受け、さらにその娘の十代将軍家治の御代には

老中の地位に上り詰めた意次は、ようやく吉宗から託された”赤面疱瘡”の根絶に乗り

出します。残念ながら従来の漢方医学では見つけられなかった赤面疱瘡の治療法。

意次は蘭学、つまり西洋医学の力を頼ることにしました。

 

当時、蘭学に対する世間の目は冷たいものでした。極秘で研究するのにうってつけの

場所が大奥です。意次は長崎からオランダ人との混血の蘭方医・青沼を呼び寄せ、

大奥の男たちに蘭学を学ばせます。意次に心酔する平賀源内(女・変人)の協力も有り、

青沼たちはジェンナーの”種痘”に似た予防接種法、”人痘接種”を発見します。しかし

田沼意次が幕府や民衆のためを思い行ってきた独創的な政策は保守的な人々に理解

されることは無く、また権勢欲にかられた一橋家の治済の暗躍もあり、将軍家治の

死去とともに意次は汚名にまみれて失脚し、大奥での研究も中止に追い込まれました。

青沼は処刑されてしまいます。次の十一代将軍は治済の息子、家斉。三代家光公以来の

男将軍です。政の実験は治済が握り、お飾りの将軍である家斉は大奥に集められた女

たちと子作りに励む他ありませんでした…(幕府の財政悪化の一因)。

 

数年経ちました。大奥を追われた青沼の弟子・黒木たちは診療所を営みながら胸の内に

人痘接種の再開へ諦めない思いを抱いていました。そんな彼らの元にいつまでも母・

治済の言いなりになることを良しとしない将軍家斉が訪れます。家斉はかつて青沼から

人痘接種を受け、赤面疱瘡の猛威をまぬがれた一人でした。家斉の密かな助力により

黒木らはとうとう赤面疱瘡にかかった熊の膿を使った”熊痘(ゆうとう)”を完成させます。

熊痘はかつての人痘接種より安全性が高く、家斉の命で日の本全ての男の子に接種が

施されたことによってようやくこの国は赤面疱瘡の恐怖に打ち勝ったのです。

 

※ここから幕末編

 

また時が流れました。世の中に男の数が増えると、男と女が対等に働く…のではなく、

赤面疱瘡流行以前の男中心社会に戻りつつありました。すでに”黒船”は来襲し、

異国人が開国を迫っています。その他もろもろの問題に対して財政難、旧来の体制から

抜け出そうとしない幕府は毅然とした対応が取れず、その威光は地に墜ちていました。

人々は頼りにならない幕府の代わりに京の天皇へ心を寄せ始めています。難しい

舵取りを要求される時代に十三代将軍の座についたのが家定(女性)でした。

 

父である先代家慶公の歪んだ執着のために2度も夫を失い父母両方から毒を盛られ、

心も体も蝕まれていた家定に、薩摩の名君島津斉彬の養子・胤篤(=篤姫)が3度目の

夫として婿入りします。次代将軍に家定の従姉妹である紀州の福子姫(=後の家茂)では

なく、斉彬が支持する一橋家の慶喜を選ばせるために…。

 

美男子の胤篤は薩摩の富と諜報能力を背景に、非の打ち所の無い振る舞いで輿入れ早々

大奥の男たちの心を掴み、家定も男女の契りは交わさないまでも胤篤との語らいの

ひとときにまんざらでない様子。一方、没落した下級武士出身ながら家定の誠の忠臣・

老中阿部正弘(女)に見出され大奥総取締の地位に就いていた瀧山は当然この”薩摩の

間者”を警戒しますが、なんだかんだ両者とも聡明でまっとうな人間であり、”家定様の

幸福”という最優先事項で一致したため、深刻な確執にはなりませんでした。

 

穏やかな胤篤の思いやりは徐々に家定の心と身体を温めていきました。元々薩摩の

斉彬に家定の婿を選んでくれるよう頼んだのは阿部正弘でしたが、異国人との交渉や

各方面で噴出する不満に対応しながら懸命に政務を行っていた彼女は家定が健康を

取り戻すのと引き替えのように病が悪化していきました。国難を前に志半ばで倒れる

己の運命を嘆いていた正弘は、良い伴侶を得て幸福そうに笑う家定の姿をようやく心の

救いとすることができたのでした…。

 

しかし、時代の荒波はささやかな幸福をも飲み込もうとしていました。この国を取り

囲む現状は厳しさを増すばかり。阿部正弘の早すぎる死によって幕府はさらなる苦境に

立たされるのでした…。

 

※※※ 

 

幕末の情勢の複雑さは私の手に負えないので詳しい解説は省かせていただくとして、

胤篤=篤姫の人柄の円満さにこれでこの先どうやって和宮といがみあうのか気になる

ところです。和宮がそうとう困った子じゃないと厳しいかも…。私の幕末大奥の最初の

イメージは大河ドラマ篤姫」ではなく十数年前のフジテレビ版「大奥」 でして、

そっちの和宮篤姫でなく家茂の実母・実成院ともめてましたけど、家茂の死後二人が

和解したシーンは泣けました。家茂・和宮は私の心の中の良い夫婦でいて欲しい二大

カップルのうちの一組です。(もう一組は浅井長政お市) 家茂=女性が確定している

以上、和宮は男性なのかな…いや、意外性で女性同士の夫婦になったりして…?

 

どちらにしても、家定の時代でさえ女の幕臣は残り少なくその立場も弱くなっているの

だから、この先女将軍になるはずの家茂の立場はさらに苦しくなることでしょうね。

せめて良き伴侶を得てほしいものです…。

 

家定と胤篤の仲良しっぷりも先のことを考えると心配でなりません。なんか将軍家、

大奥の強烈な愛憎劇を見続けたせいか”普通に”好き合ってる二人を見ると逆に新鮮な

気分になりますね。せめて今だけは幸せでいて…!!

 

そして、最後の将軍になる慶喜は怜悧な知性の持ち主でも高慢で他人への思いやりに

欠けた人間として登場しました。お父さんの水戸斉昭も別方向に厄介だけど、まだ少し

可愛げのあるおっちゃんなのに…。幕府滅亡の責任を安易に慶喜一人に押しつける流れ

にはならないでしょうが、男女逆転世界の終焉がどう描かれるのか、今後もしっかりと

見届けていきたいですね。あぁ、一年待ち遠しい!!

 

 

 ↓個人的に気に入ってるか気に入ってないかはさておき堺雅人菅野美穂を結びつけた

大きな意味のある実写映画2作目