読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

碧色の旗を掲げ

節操無しのレビューブログ。映画、小説、マンガ、ドラマ、イベント、とにかくマイペースに誉めたり誉めなかったりいろいろ書きたい。

志水アキ「魍魎の匣」

マンガ

このブログを気ままに書きすぎた結果、いまいち記事に統一感が無くてカテゴリーが

どんどん増えてしまいました。何でもありのごちゃごちゃしたよくわからないもの…

といったら魍魎だ!!…と思ったわけでもないのですが、今回はぶ厚いことで有名な(?)

京極夏彦の代表的作品のコミカライズ版「魍魎の匣」について語ります。

(ネタバレ少なめ)

 

魍魎の匣(もうりょうのはこ)

原作: 京極夏彦  作画: 志水アキ

発行:KADOKAWA / 角川書店 怪COMIC  全5巻

 

 

戦後間もない昭和27年の夏の夜、ある少女が武蔵小金井駅のホームから転落し重傷を

負いました。たまたま居合わせた木場刑事は少女・柚木加菜子と同行していた友人の

楠本頼子に事情を聞きますが、思春期まっさかりの頼子の証言は要領を得ず、困惑

しながら加菜子の運び込まれた病院に移動します。そこに現れた一人の美しい女性に

衝撃を受ける木場。柚木加菜子の姉と名乗った柚木陽子はかつて美波絹子という芸名で

活動をしていた人気女優でした。木場は懐にブロマイドを忍ばせるほど彼女のファン

だったのです。さらに弁護士っぽい男やら陽子の元付き人やらが現れて揉め始めます。

加菜子はなにやら複雑な事情を抱えている様子でした。病院で手に負えないほどの重態

だった加菜子は陽子の要望で「匣」のような医学研究施設に移動し、集中治療を受ける

こととなりました。

 

実は柴田財閥総帥のただ一人残された血縁者とされていた加菜子を誘拐するという

脅迫状が送りつけられ、警察は治療中の彼女の身柄保護のために研究所に厳重な警備を

施します。管轄外だけども乗りかかった船だと居座る木場刑事。しかし加菜子は研究所

からこつぜんと姿を消しました…。

 

木場刑事たちが加菜子の行方を追う一方、若い娘ばかり狙ったバラバラ殺人事件が発生

します。そして「筺」をご神体とする霊能者の団体。新進気鋭の幻想作家…。無関係と

思われた一連の事件を水面下で結びつけるのは「魍魎」。古本屋の傍ら神主、拝み屋、

憑きもの落としを営む変わり者・京極堂こと中禅寺秋彦とゆかいな仲間たちが大きな

謎に挑みます。

 

 

 …でも連携悪いから、事態が悪化する場合もあってね…京極堂さん口ばかりでちっとも

動こうとしないし。携帯どころか固定電話すら普及率の低い時代に、大の大人たちが

なんでもかんでも腹を割って話し合っていちいち納得して…ってのも不自然かなぁ、と

思いつつも若干イライラしました。暴走ぎみの木場刑事、鬱々した売れない作家関口と

カストリ雑誌(昔のゴシップ雑誌のようなもの)の編集者鳥口、探偵の榎木津、そして

京極堂…登場人物だれもかれもクセのある人たちばかりです。

 

原作小説は未読ですが、ずっと前に映画版を観たことがありまして。設定や時系列に

異なる点が見受けられ、最初は少々混乱しました。

 

決してミステリとして正統派とは言えないと思います。「この世には不思議なことなど

何もない」と言いながら榎木津さんの特殊能力が存在するわけですし。最後に現れた

黒衣の京極堂がコミックス全5巻のうちの1巻分丸々もちいて「憑きもの落とし」…

つまり謎解きって様式はありなのでしょうか? 何せ京極堂さんったら直接関わって

ない、出会っていない人のことを見てきたかのように語るのですから…。けど面白い。

京極堂のだだ長いうんちくにも引き込まれる。彼の本領はその言葉によって人の心を

揺り動かすことなのでしょう。このシリーズについてはこういうものだ、と思うしか

ないですね…。

 

マンガで京極堂のうんちくをまとめるのはひと苦労だったことでしょうが、 マンガの

最大のメリットはビジュアル的に楽しめることです。特に陽子と加菜子、さらに頼子の

美しさを十分に堪能できます。榎木津氏も無駄すぎる超美形で周囲から浮きすぎてて

面白いけれど、彼女たちの美しさはズルいくらい…!! 男性陣が振り回されるのも理解

できます。陽子の胸とかたまりませんぜ!?

 

でも見た目だけがその人の全てじゃない。大人の都合に振り回され続けた加菜子は

本当に可哀想でしたね…何を思っていたのでしょうか。冒頭は頼子の視点で物語が

始まった為、彼女の思春期の潔癖さ、徹底的に自分の視点でしか世界を見ない姿勢も

まぁわかるのですが、私は彼女の母親の立場も理解できる年齢だから…という感じで

出てくる人たちみんな、根っからの悪人なんていないんです。各人が抱える少しの

澱みがそれぞれ偶然他者に影響を及ぼし、その結果大きなゆがみが生まれて悲劇が、

破滅に向かってしまったやるせない物語でもありました。5巻のみんなで記念撮影!な

カラーイラストがとても切ないです…。

 

 

↓実写映画化もアニメ化もされてますが、とりあえず原作。

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)