碧色の旗を掲げ

節操無しのレビューブログ。映画、小説、マンガ、ドラマ、イベント、とにかくマイペースに誉めたり誉めなかったりいろいろ書きたい。

小説版「超高速!参勤交代リターンズ」

2014年に公開されて大ヒットした時代劇映画「超高速!参勤交代」の続編にあたる

超高速!参勤交代リターンズ」の小説版です。一作目がお気に入りの映画でしたから

続編も観に…行くのが面倒で小説の方を買いました。小説が先に出版されたようで、

原題は「超高速!参勤交代 老中の逆襲」。続編の映画化決定後に改題されました。 

 

超高速!参勤交代リターンズ 

超高速!参勤交代 リターンズ (講談社文庫)
 

 

著者:土橋章宏   発行:講談社文庫

 

 

(また講談社だった…)

 

悪徳老中の策略により金山隠しの疑いをかけられ、通常8日かかる参勤を5日でやり

遂げ江戸城へ登城すべし…と無理難題を押しつけられた磐城湯長谷1万5千石の藩主

内藤政醇は、志をともにする家臣たちと知恵と武芸を尽くして見事参勤を成し遂げ、

老中松平信祝に手痛い一撃を喰らわせます。将軍吉宗公に褒められ世間からも大喝采、

心を通わせるおなごも見つけてこれにて一件落着…かと思われましたが、江戸から

のんびり帰路に着く彼らにもたらされた知らせは、信祝の早すぎる老中復帰でした。

 

さらに信祝の意のままになった幕府より下された命令は2日で湯長谷へ「交代」する

こと、莫大な金子が必要な江戸城の普請工事を請け負うこと…。すべては政醇への

復讐を目論む信祝の陰謀でした。幕府の人々は皆信祝を恐れ、または殺され、あるいは

買収されて沈黙し、頼みの綱の吉宗公は日光参拝のため不在。さらには尾張柳生家

からの刺客。再び絶体絶命の危機に見舞われた政醇と家臣団は全力で湯長谷へと

走ります。果たして湯長谷で彼らを待ち受けているものは…!?

 

※※※

 

分かり易い文体にスピーディな展開。さくさく読み進められます。小説版の前作は

未読ですが、映画のラストと繋がらない点が見受けられることから全く同じ内容では

なかったようです。

 

家臣と領民と湯長谷の土で育った大根と前回恋仲になった元旅籠の飯盛女・お咲を

愛する、大らかで優しく、質素で勇敢な湯長谷のお殿様、内藤政醇。小説では映画で

触れられなかった政醇の正室の存在が明らかにされています。贅沢好きで江戸の

湯長谷藩邸の金を浪費しまくり、政醇とも不仲。先の参勤騒動で恐れをなしてとっとと

実家の黒田家に逃げ帰ったとのこと…。政醇いい人なのに…。

 

湯長谷藩の人々はそんな正室に振り回されたからこそ、身分が低くても健気な働き者の

お咲が政醇の側室となるのを受け入れられたんでしょう。政醇は幸薄い人生を送って

きたんですね。だからこそやっと得た仲間やお咲、領民を守るために戦う意志を持ち

続けました。その上本人も居合いの達人で超強いんだからすごいお殿様です…。

 

彼を支える家臣団もみんな個性的。知恵者で毎回毎回ロクな目に遭わない家老の相馬、

剣術で並ぶ者のいなさすぎて最近竹光に凝ってる荒木、江戸屋敷での幕府の人間や

諸藩との付き合いに疲れ、参勤交代を完遂しようと奮い立つ政醇たちを冷たい目で見て

しまう秋山、弓の名手にしてイケメンな鈴木などの武芸百般を極めし一騎当千の強者が

7名に加えて戸隠流の抜け忍・雲隠段蔵が加わるはずが、思わぬ形で再会します。

  

一方…おそらく映画版はかなり省略されていると思いますが…リターンズの信祝は

本当に頭がおかしいんじゃないかと疑うほどの徹底した悪役っぷりを発揮しており

まして、ハッピーエンドを信じないと読み続けるのは厳しい作品ですね…。いくら

身分社会とはいえこんな非道がまかり通るのかと非常に気分悪いです。

金、コネ、地位、権力、人の心を操る方法に人を苦しませる方法をも知ってる頭脳、

実行力、冷血さ…あまりにも多くのものを持った恐ろしい敵なのです。

 

しかも信祝は小藩とはいえれっきとした大名である湯長谷藩主の地位をエサに

尾張柳生家まで味方につけてしまいました。秀忠や家光に仕えた柳生宗矩の子孫では

なく、宗矩の甥の利厳を始祖とし、尾張藩主に代々仕えてきたもう一つの柳生家です。

影武者徳川家康」に登場したチート性能剣士兵庫助の子孫ね…そりゃ強いわ…と

ぼんやり思い出し。2日で「交代」をするだけでも大変なのにこの当主率いる手練れの

柳生七本槍が道中襲いかかるのだからたまったもんじゃありません。しかし時代劇に

チャンバラはつきものですね。そして当然、湯長谷に到着したら済む話でもなく…

 

現実主義の名の下に強権の前にへりくだり、賄賂を差し出してことを穏便に済ませる、

本当にそれでいいのか。腐敗を正し、誠を貫く者を馬鹿だと言えるのか。

政醇たちがいくら貧しくともみんなで力を合わせてまっすぐ生きる幸せを信じようと、

あんな強敵に勝たない限り、彼らの正しさを証明できないとは…。さもないと彼らの命

ばかりでなく大切にしていたものを根こそぎ奪われて、信祝の信じる正しさの勝利した

世の中になってしまうのです。湯長谷チームじゃなければとうてい切り抜けることは

不可能な絶望的な戦いでした。将軍様はもっとしっかりして欲しい。

 

ただし、湯長谷藩士たちは全く孤立無援だったのではありません。吉宗公の御代に

活躍した正義のお奉行、ご存じ大岡越前も登場します。このお話は実在した人物が

多数登場しておりますが、史実と切り離して考えた方がいいでしょう。

だって信祝よりも政醇の方が先に亡くなってしまうなんて、納得できないじゃない!

 

 

 ↓こっちは前作の小説版

超高速! 参勤交代 (講談社文庫)

超高速! 参勤交代 (講談社文庫)